

満足度の5段階評価
図書館の利用者満足度調査では、次のような5段階評価がよく使われます。
満足 / まあ満足 / ふつう / やや不満 / 不満
この評価の中にある「ふつう」を、皆さんはどのように捉えているでしょうか。
満足でも不満でもなく、評価にあまり関係がないので不要だと考える人もいるかもしれません。実際、満足か不満かを明確にしたいという理由から、「ふつう」を省いた4段階評価を採用しているアンケートもよく見受けます。
満足の割合が重要?
「ふつう」を不要とする背景には、「満足」「まあ満足」を選んだ人の割合が重要だという考え方があります。多変量解析などの分析手法を用いず、満足の割合を基に評価する場合には、自然で合理的な考え方として広く受け入れられています。
「ふつう」の意味
満足の割合と不満の割合が分かれば、評価するうえで十分だと考えられる中、なぜアンケートには、満足でも不満でもない「ふつう」という選択肢があるのでしょうか。
ここで注目してほしいのは、「ふつう」を選択した人は、「満足」や「まあ満足」を選んでいないということです。少なくとも、満足という評価をしていないのです。
普段から図書館をよく利用している人にとって、アンケートで「不満」を選ぶことには、心理的な抵抗があるかもしれません。しかし、「ふつう」という選択肢があれば、明確に「不満」と表明しなくても、満足とは評価していないことを示せるのです。
もちろん、「ふつう」を選んだ人が、必ずしも不満を抱いているとは限りません。それでも、満足している人とは異なる層として捉え、その回答の背景を考えることには意味があります。
「ふつう」を設けることは、満足とは評価していない利用者をより正確に把握するための手がかりになります。そこでは、満足の割合を高めることだけでなく、「ふつう」以下を選択した利用者の意見に目を向け、必要な対策を検討することにつながります。
「ふつう」の役割
自治体の住民満足度調査では、「ふつう」を設けず、4段階評価を採用しているところも少なくありません。満足か不満かを明確にしてもらい、評価を判断しやすくするという意図があるのでしょう。
しかし、先に述べたように、回答者には、あからさまに不満を表明することへの心理的な抵抗があるかもしれません。「ふつう」がなければ、回答者は「まあ満足」や「やや不満」を選ぶか、あるいは回答を控えることになります。
西に細長く伸びる東京都において、4段階評価を採用している自治体のアンケートを対象に、ある質問に対する無回答の割合を調べてみました。
都心からの距離によって違いが見られ、結果は次のとおりでした。
- 都心:数%
- 都心から10~20km:7~12%
- 都心から40~50km:20~28%
都心では無回答率が数%にとどまっていた一方、都心から離れるにつれて無回答率が高くなる傾向が見られました。また、不満を選択する人が、ほとんどいない自治体もありました。
この結果だけで原因を特定することはできませんが、回答の仕方には地域による違いがある可能性がうかがえます。住民と図書館職員との関係や、地域における人間関係などが、回答者の心理に影響している可能性も考えられます。
こうした点を踏まえると、「ふつう」を設けることには、回答のしにくさを和らげ、利用者の意見を把握しやすくする役割があると考えられます。「ふつう」は、単なる中間的な選択肢ではなく、回答者の心理にも配慮した選択肢なのです。
分析への影響
それでは、4段階評価のデータで多変量解析を行っても、正確な情報は得られるのでしょうか。
もちろん、分析は可能です。4段階評価の結果を見ると、回答者の評価が単純に満足か不満かの二つに分かれるのではなく、満足の程度に幅があることが分かります。「まあ満足」では、何らかの不満の要素が含まれていると考えられ、そこには、改善の余地があることを示す結果が残されています。
一方、5段階評価では「ふつう」は、少なくとも“満足側を選択していない層”として着目した分析が可能になります。
「ふつう」をどう扱うか。何気ない選択肢の一つですが、利用者の意識を理解し、図書館サービスの改善につなげるうえで、改めて考えてみる価値があるのではないだろうか。