
統計ユーザーという発想
統計ユーザーとは、自ら統計手法を開発する人ではなく、既存の分析ツールを使いこなし、その結果を業務改善に活かす人のことです。
図書館でデータ分析が普及しないもっとも大きな理由は、データ分析ができる人材がいないというものです。
データ分析というと、統計学を一から学び、専門ソフトを使い、高度な解析を行わなければならないという印象を持たれがちですが、実は、統計ユーザーという立場をとることで、人材不足の問題は大きく改善されます。
例えば、カウンターで資料の貸出・返却処理を行う際に、図書館システムの内部プログラムやハードウェアの動作原理を知らなくても、必要なのは、システムの操作方法を理解し、画面に表示される情報を正しく読み取って処理することです。
私たちは、図書館システムの内部構造を知らなくても日々の業務を問題なく行っています。
データ分析も、それと同じように考えればよいのです。
統計学を学んでいなくても、日ごろから適切な分析手法を使って業務改善に役立てているのが、実践的な統計ユーザーの姿であり、図書館での人材の育成は、発想の転換で実現できるものでもあるのです。
傾向から改善の優先順位を考える
統計ユーザーに求められるのは、複雑な数式を扱う力ではありません。
分析結果を正しく読み取り、業務改善に結び付ける力です。そのためには、「傾向」を読み解く視点が欠かせません。
人の行動という心理的・社会的現象を扱う図書館では、有意(意味がある)かどうかだけで判断するのではなく、「傾向」を捉える視点が重要です。
統計学では、有意水準を満たすかどうかが重視されます。
しかし、図書館でデータ分析を活用する目的は、学術論文を書くことではなくサービスを改善することです。
そのため、水準を満たさなかった要因についても、「利用者満足に影響している傾向があるのではないか」という視点で結果を読み解くことが重要です。
統計学の考え方では有意でなくても、「~の傾向がある」ということに気付くことに価値があります。
長年の経験や勘は、こうした場面で活きてきます。
なぜそういう傾向が表れるのか、その理由や原因に思い当たることも多いはずです。
それが、図書館サービスに影響を与えている要因の強さや可能性を読み取り、改善の優先順位を考えることにつながります。
統計ユーザーに求められるのは、統計学の専門知識ではなく、分析結果を業務改善に活かす力です。
データ分析は、一部の専門家だけの技術ではありません。
統計ユーザーという考え方が広がれば、図書館でデータ分析を担う職員は着実に増えていくでしょう。
その積み重ねが、利用者に寄り添った図書館づくりにつながっていきます。