
効果的なアプローチ
図書館職員は、窓口業務や資料管理など優先度の高い日常業務を抱えており、新たな業務にまとまった時間を割くことが容易ではありません。また、業務遂行能力の高い職員ほど新たな仕事を任される傾向もあり、分析業務にまで手が回らないというケースもあります。
データ分析に取り組みたいと思っているけれども、時間を割く余裕がない、という声もしばしば耳にします。
データ分析に関して「時間がない」という時、次の2つのケースが考えられます。
1.分析手法とその手順そのものについて勉強する時間がない。
2.分析手法も手順も分かっているが、分析作業に手が回らない。
では、この「時間がない」を解決する方法は無いのでしょうか。
1の課題を解決し、分析ができる人材が増えれば、2については、複数の職員で分担できる可能性が出てきます。
そこでまず人材を増やすべく、データ分析に関する学習方法について考えてみましょう。
目指すのは、高度な統計学やデータサイエンスの専門知識を持たないものの、ツールを駆使して自分の業務に関するデータ分析を行う実務担当者になることです。
そのため、ツール操作と結果の読み方に集中して学ぶ、実務志向型の学習スタイルを目指します。
まず学ぶ分析手法を5つに絞り込む
さらに、限られた時間・労力を最大効果に変えるために、膨大な統計学の中から、図書館でのデータ分析に必要な事柄を見出し、学習プロセス全体を最適化することが効果的なアプローチになります。
ここでいう「最適化」とは、統計学を幅広く学ぶことではありません。限られた学習時間の中で、図書館の実務に必要な分析能力をできるだけ効率よく身につけることです。
図書館職員が実務としてデータ分析を始める際には、まず次の5つを中心に学ぶことが効果的だと考えられます。
1.相関分析
2.重回帰分析
3.主成分分析
4.対応分析(コレスポンデンス分析)
5.テキストマイニング
これは「図書館のデータ分析にはこの5つだけで十分」という意味ではありません。まず実務で活用する機会の多い手法から学び、必要に応じて学習範囲を広げていくという考え方です。
また、いきなり5つすべてを習得する必要はありません。
アンケートの分析を始める段階では、特にExcelの分析ツール(アドイン)を使えば習得できる相関分析と重回帰分析を習得するだけでも、図書館のアンケート調査における多くの実務的な問いに対応することができます。
実際の業務で2つの分析を経験したうえで、必要性を感じた段階で主成分分析、対応分析、テキストマイニングへと学習範囲を広げていく。この段階的な学習こそが、最適化学習の基本的な考え方です。
■相関分析
要因間の関係性がどうなっているかを知りたい時に役立ちます。
例えば、年齢と資料の利用傾向との関係や、利用頻度と図書館サービスへの評価との関係を把握する、といったようなことができます。相関分析の結果は、利用者像(コミュニティ)を理解するための基礎的な情報と捉えることができます。
■重回帰分析
重回帰分析は、予測や、ある結果に関連する要因を把握するために利用される手法です。図書館においても満足度と関連する要因の把握などに広く活用できます。
例えば、所蔵資料の総合的な満足度に対して、どの分野の満足度が強く関連しているのか、あるいは、当該図書館の総合評価と強く関連している図書館サービスはどれか、といったことを知ることができます。
組織としての分析能力
統計学を体系的に学ばなければ、分析結果を解釈できないと思っている人が多いのではないでしょうか。
しかし、実務でデータ分析を始めるために、統計学を最初から体系的に学ぶ必要があるとは限りません。
分析手法の目的を知り、出力結果のどこを見ればよいのか、そして、その結果をどのように業務上の問いに結びつけるのかを学ぶことから始めればよいのです。
図書館の実務に必要な分析を先に定め、そこから逆算して必要な知識を学ぶ。こうした学習方法であれば、限られた時間の中でも、分析ができる職員を増やしていくことができます。
これは、統計学を軽視するということではありません。限られた学習時間を、図書館の実務に必要な能力の習得に集中させるということです。
そして、分析できる職員を一人ではなく複数育てることによって、分析業務を分担できるようになります。
一人の職員の能力に依存するのではなく、組織としてデータ分析ができる状態をつくることが、データ分析を継続的な図書館業務として定着させることにつながります。