満足度と重要度を聞くアンケート調査の場合
満足度と重要度
満足度と重要度の両方をアンケート調査でたずねている図書館がありましたので、見てみたいと思います(出所:令和3年度 岩手県立図書館 来館者アンケート結果)。
作図は、すべてアンケート調査の結果をもとに行っています。項目名は筆者による略記になります。
散布図
「とても満足である」と「とても重要である」に注目してその関係を散布図で見ると以下のようになります。
散布図では、「本の品揃え」が重要度に対して満足度がもっとも乖離しています。
「本の探しやすさ」「辞書・郷土資料」「ホームページ」も乖離が目立っています。
一方、館内はきれいで、機器・設備も整っていて施設面では満足している様子が分かります。
また、職員の利用者に対する応接にも高い評価がうかがえます。
さらに、「満足(とても満足である+満足である)」と「重要(とても重要である+重要である)」で散布図をつくると以下のようになります。
ここでも、「本の品揃え」は重要度と満足度との間に乖離が大きい様子が見て取れます。
ニーズの把握
この二つの散布図からは、施設に関してや職員の対応には満足している様子がうかがえ、本の品揃えや本の探しやすさについては不満が大きい様子が見て取れます。
特に「本の品揃え」についての満足度は例年と同様の水準で、長期間ほぼ横ばいの状態が続いています。
この図書館のアンケート調査では、主に評価に関する質問を行っていますが、本の品揃えが課題であることは明らかですので、今後は、充実して欲しい資料分野はどこかを聞く質問項目が必要になっているのではないでしょうか。
要望分野の情報が得られると、「本の品揃え」の満足度を目的変数として重回帰分析を行うことができます。
満足度を上げている分野や下げている分野が明確になりますので、選書において有益な情報になります。
重回帰分析はExcelの分析機能を使って容易に行えるものですが、取り敢えずは資料分野と「本の品揃え」満足度とのクロス集計表を作成することでもある程度は判断ができると思います。
各分野で評価を比率で示した分布をみて、不満の比率が大きい、あるいは満足の比率が小さい分野は、選書計画においてまず注目すべき分野と言えます。
貸出情報でニーズを把握できるか
利用者のニーズは貸出情報を見れば分かると言われますが、実は貸出情報からニーズを探るのは適切ではないと考えています。
例えば貸出が少ない分野は、そもそも需要がないのか、需要はあるが借りたい本がないためなのか、貸出数からはニーズの存在が正確には分からないのです。
リクエストで分かるはずという意見もありますが、必ずしも要望がある人すべてがリクエストする訳ではなく、ともすると一定の利用者のリクエストの情報に集中してしまい、地域住民のニーズを適切に把握できるとは言い難いのです。
従ってアンケート調査では、要望を聞く質問が重要になります。
満足度の大小だけで判断するのではない、「分析」をする上でも必要な変数になります。
単に貸出数の多寡で選書方針・購入計画を立ててしまうことが続いてしまうと、満足度の改善はいつまでたっても望めないことになってしまいます。