アンケート回答に見る移住政策と結婚していない理由
鶴居村は南部の釧路湿原と北部の丘陵地帯からなり、タンチョウの生息地として知られています。
村を流れる3つの河川が豊かな森林と草地を形成し、酪農・農業が盛んです。
移住者の受け入れに積極的で、長期滞在によってリアルな移住体験ができる方策をとっています。
過去に、鶴居村では人口減少対策の一環として、「人口減少対策に関するアンケート」を実施しています。
このアンケートの結果がどう活かされていくのか、移住政策と結婚していない理由について見ていきたいと思います。
ここで、鶴居村についてもう少し紹介をしておきましょう。
ホーム/鶴居村 (tsurui.lg.jp)
阿寒郡鶴居村
(あかんぐんつるいむら)
人口 2,490人
(住民基本台帳人口 2022年6月30日)
財政力指数 0.19(2020年度)
鉄道 昭和43年まで村営軌道があった。
久著呂川、雪裡川、幌呂川の流域に森林や草地が広がる。冬の寒さは厳しく、降雪量は少ないが地下凍結は1メートル近くに及ぶ。夏は冷涼で過ごしやすい。
自立を目指す村
鶴居村は、「日本で最も美しい村」連合の一員です。
平成の大合併が進む中、日本の農山漁村の景観・文化を守りつつ、最も美しい村としての自立を目指す運動に参加しています。
大合併後、阿寒郡に残った自治体は鶴居村のみで、1郡1村となりました。かつての郡内の他の町村はすべて他市との合併を選択しています。
村は、地域産業育成や観光に力を入れるとともに、人口減少対策として多くの施策を実施しています。
子育て支援に力を入れており、子どもが育てやすい環境に取り組んでいます。
水道メータがなく、定額制のため大家族にはありがたい。
公共交通網の整備をすすめ、デマンドバスの運行も行っています。
移住支援にも積極的で、移住体験住宅による1~2か月のお試し移住を行っています。
移住者にとっては、全戸で光ブロードバンドサービス環境が利用できる点もうれしいです。
公設民営方式により、村が村内全域に光ファイバー網の整備を行い、通信事業者に貸し出す事で光ブロードバンドサービスの利用環境を構築しており、金額的にも都会と大差ない環境を提供することができています。
豊かな自然環境で、リモートで仕事をするという働き方を積極的にサポートしてきた村でもありました。
鶴居村図書館
2019年3月31日、ふるさと情報館みなくる内の図書室が「鶴居村図書館」としてオープン。
「図書室」ではできなかった国立国会図書館との連携やコピーができるようになりました。
所蔵数は約7万冊。区切られた閲覧スペースや子どもスペースあり。図書館を活用した今後の取り組みに期待したいです
移住政策
鶴居村在住のブロガーの発信状況を調べると、移住してきた住民の発信が多く、移住者は広く全国からやって来ている。
2戸ある移住体験住宅も今年度はすべて予約が入っており、令和5年度分(令和5年4月~令和6年3月)の予約は、令和5年1月10日~13日に電話受付を行うとのこと。
村の公開情報を見ると、移住の取り組みとともに、住みやすい村の取り組みも積極的に行っていて、その取り組みは人口2500人の村とは思えない質の高さ。
住民の意見集約、計画立案、実施を確実丁寧に行っている様子が見て取れます。
これだけ取り組んでいる村でも、現在の村の人口は令和2年の国勢調査からは減少しており、人口減少対策もまた検討を深めて実施しています。
結婚していない理由
村は人口減少対策の一環として、平成27年6月に鶴居村人口減少対策に関するアンケート調査を実施し、9月にその報告書・自由意見を公開しています(配布数1,756、回収数670)。
その中の質問、「現在、結婚していない理由は何ですか(複数回答可)」に対する、50歳以下の村の 独身者102名(男女比ほぼ同数)の回答を見てみます。
以下は、年齢別と回答数(回答%から逆算して回答数を算出)をもとに行った対応分析(コレスポンデンス分析)です。略記は次のとおりです。
いい相手が見つからない・出会いがないことと、結婚資金や生活する上での収入に関する不安の2点が主な障壁になっているようです。
資金、収入に関して思うのは、もし事前にお互いが同じ理由で結婚に踏み切れないと分かっているとしたら、交際のきっかけもだいぶ違ったものになるのではないかと思ったりするのです。
出会いの場づくりが課題となっているようです。
仕事(学業)は、19歳以下、35~39、20~24の各年齢層との関連が強く、それぞれの年齢層と等距離になるような位置にあります。
回答者の性別・地域の情報は公開されていません。
本来は男女別によってこの分析は異ってくる可能性が大きいのですが、小さな村ですと年齢・性別・地域によって個人が特定されやすいので、非公開は致し方ないでしょう。
自由意見
人口減少対策に関する自由意見も公開されています。142名から率直で貴重な意見が多く寄せられていました。
テキストマイニングを行って共起ネットワークを作成してみました。
これらのアンケートの結果は、後年「鶴居村人口ビジョン」「鶴居村まち・ひと・しごと創生総合戦略」の発表へとつながっています。
対応分析(コレスポンデンス分析)
自由意見の対応分析は以下のとおりです。
原点から離れているほど特徴が強く、方向が同じであれば同じような特徴を持つものと考えられます。
鶴居村の交通事情は、バスの本数が少ないなどあまり良くないという意見が目立ちます。
また、保育園の利用に時間的な制約や子どもを預かる際の条件があり、必ずしも子育てがしやすい訳ではないという指摘もありました。
平成27年に実施したアンケートでのこれらの指摘を踏まえて、子育て支援や公共交通網の整備に力を入れ対策を実施している様子が、最近の「鶴居村まち・ひと・しごと創生総合戦略」「鶴居村人口ビジョン」などからうかがい知ることができるのでした。