自治体の財政力と図書館

 自治体の財政が厳しくなると最初に削られるのが図書館関連費だと言われてきました。
 
 しかし昨今では、図書館を観光・地域振興やまちづくりなど地域活性化に積極的に活用しようとする取り組みが広がっており、図書館関連費は重要視されるようになってきています。
 
とは言え、予算が各自治体の財政力を踏まえたものになるのは当然のことです。

 その財政力は、「財政力指数」が一つの目安になっており、過去3年間の単年度財政力指数の平均値で表しています。
$$単年度財政力指数=\frac{基準財政収入額}{基準財政需要額}$$
 この値が1未満であれば、需要額に対して収入額が不足しているので地方交付税が交付され、1以上であれば収入超過ですので不交付になります。

 不交付団体は一般に富裕団体と呼ばれています。しかし、不交付団体になると国庫支出金の減額調整などがあり、必ずしも財政運営に余裕があるということではないようです。

東京都内自治体の財政力

 下図は令和元年度の東京都特別区/市/町村の財政力指数です。3つの区分け内では、自治体をアルファベット順に並べています。
 
 都道府県単位の指数では、現在は東京都のみが1を超えています。バブル期は1を超える県が複数あったようです。
 

総務省 統計資料 財政状況資料集から東京都のデータを基に筆者作成

 

特別区(23区)と市

 23区の指数は、全般的に市のそれよりも低い値になっています。
 
 都心区は、昼間人口は多いものの夜間の居住者そのものは少ないため区の税収は多くありません。

 都心で働く人たちの居住域となる周辺区は、企業の有無によって税収は大きく変わってきます。

 一般に23区は自らの税収で賄える割合は少なく、都と税源を共有する財政調整交付金に頼る割合が大きいのが実情です。

 市町村と違って23区は都の財政の中でやりくりをする必要があり、図書館運営においては市町村のように独自の思い切った施策が取りにくいという一面があります。

 かつては、税制の観点から普通の市になることを目標とした区もありました。

 都構想を考えている自治体では、区になるとこれまでの市としての独自の運営が損なわれてしまう懸念があることを念頭に置いておかなければならないでしょう。
 

町村

 町村は一部を除いて、指数が0.1~0.3の間にあります。自らの税収では足りずに、地方交付税交付金、国庫支出金、都支出金などに頼っています。

 平成11年からの自治体の「平成の大合併」では全国で多くの市町村合併がありましたが、大都市部を抱える都道府県ではあまり合併は進んでいないようです。

 東京都においては田無市と保谷市が合併して西東京市になった1件のみで、町村が関わる合併はありません。また全国には合併を選ばずに、自立自尊の道を行く市町村も一方では存在しています。
 

平成の合併の評価

 平成22年3月の総務省報告「『平成の合併』について」によれば、10年間の平成の合併の評価について次のように述べています。


【合併による主な効果】

①専門職員の配置など住民サービス提供体制の充実強化

②少子高齢化への対応

③広域的なまちづくり

④適正な職員の配置や公共施設の統廃合など行財政の効率化
 
 
【合併による主な問題点・課題】

①周辺部の旧市町村の活力喪失

②住民の声が届きにくくなっている

③住民サービスの低下

④旧市町村地域の伝統・文化、歴史的な地名などの喪失
 
 合併の有無にかかわらず、少子高齢化、人口減、財政縮小のなかで持続可能な地域社会を目指す自治体では、図書館を地域活性化に積極的に活用しようとする取り組みが広がってきています。

 町村の消長は日本そのものの縮図であるとすると、その縮図の中で図書館の役割を考えることは非常に大きな意義があることだと考えます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です