図書館で使える分析ツール

  図書館アンケートをしっかりとデータ分析したいと思っていても、予算に乏しい図書館では高額な分析ツールの購入はままならず、そもそも費用対効果はあるのか、分析は頻繁に行うものなのか、図書館システムの貸出データで十分ではないのかという声も出てきます。

 データを分析することで課題解決に取り組もうとする図書館員の思いが実現することは、なかなかできないでいるのが現状ではないでしょうか。

 ここではそういった図書館員に対して、予算無用で普段から手許にあっていつでも使える分析ツールについて紹介をしたいと思います.
 

Excel

1)データ分析

 図書館の現場で行うデータ分析は、まずはMicrosoft Excelがあれば十分であると言えます。

 これまで説明を行ってきた相関分析、回帰分析の他にも「データ分析」には以下のような機能があります。図書館ではヒストグラムもよく使います。
 

   
 
2)グラフ作図
 
 ヒストグラムは、グラフ作図機能の中の一つとしてここで作成することもできます。

 散布図はよく使われるグラフで、回帰式を得ることができます。

 また、箱ひげ図も作成できます。これら3つのグラフは何かと役に立ちますので、普段から使い慣れておくと良いでしょう。
  
・ヒストグラム

 例えば、1か月の期間で各1時間にどの程度の貸出利用者がいたか把握したい場合に作成します。

 下図の例では1時間に15~19人の利用が最も多かったということがわかります。

 一方で1時間に普段の3~4倍の利用者がいる場合もあるなど、利用者数の分布・頻度が視覚的にわかります。

 普段とは違った忙しさの時にはトラブルも発生しやすくなります。

 第1回の投稿で、平均値や最頻値の見当がつけば来館者数の分布を予測することができることを示しました。

 これにより忙しさの最大値と頻度はある程度は予測ができるので、そういう時の対応を普段から考えて備えておくことが大事です。

 現在では自動貸し出し機の普及が進んでいますが、まだまだカウンターでの対応が主となっているところも多いです。

 返却本の置き場所や本の背や小口の向きによる状態の違いによってどこまで返却処理が進んでいるかを識別判断できるようにして、場所と状態を普段から決めて作業の共通化・標準化を徹底しておくと、いざという時には特に説明を受けることなく現場の状況を把握することができてスムーズにヘルプに入ることができます。
 

  
・箱ひげ図

 時間帯別や曜日別、月別に利用者数を把握したい時に作図すると視覚的にわかりやすくなります。

 下図の例では、お昼前と5時前が特に利用者が多い様子が見て取れます。

 これは郊外の図書館の場合で、お昼の食事時には来館者が少なくなりますが、ビジネス街にある図書館では昼休みに来館者が比較的多くなるなど、それぞれの図書館の特徴を掴むことができます。
 

  
・散布図

 下図は「満足」と「まあ満足」を合算した割合をもとに、企画展示と施設の満足度の関係を見たものです。

 いずれも老朽化が進んでいる施設ですが、企画展示の満足度が高いと施設の満足度も高い傾向がありました。

 満足度の高い企画展示は利用者の施設に対する感情を癒してくれる効果があるようです。
 

   
3)3Dマップ

 Excelには3Dマップで地図上にデータを表示する機能があります。

 例えば域内に複数の図書館がある場合、住民がどの図書館を利用しているかの分布が視覚的にわかり、地域の状況が把握しやすくなります。
 

   
4)学習指導要領

 ちなみに、箱ひげ図は中学校で、回帰分析は令和4年4月から高校数学での必修項目になっています。

 学校教育においてデータ分析の理解と活用は必須となってきました。

  

テキストマイニング

 自由意見の分析にはテキストマイニングを利用します。
 
 ”テキストマイニング”で検索するとインターネット上には無料で利用できるサービスが存在しています。

 テキストマイニングでは、名詞や形容詞の出現回数や共起回数、共起ネットワーク、重みによってワードサイズを変えて表示するワードクラウドの生成などを行うことができます。

 テキストマイニングでは、過去との比較、他館との比較によってキー・ワードの違いを見い出すことで、その図書館の特徴や変化を知ることができます。そのことが図書館や地域の課題発見につながります。

 データのアップロードでは個人情報や組織の秘密情報に注意が必要ですが、クラウドのサービスではなくローカルな環境で分析したい場合は、後述するKH Coderが利用可能です。
 

   

統計分析のフリーソフト

 一般に統計分析ツールは高価ですが、ありがたいことに以下の先生方から無償で提供されています。

 分析をさらに深めたい方は、次のそれぞれのホームページをよく読んでいただいて、利用されると良いのではないでしょうか。なかでもコレスポンデンス分析は、地域住民の属性やニーズの把握に役立ちます。

1)HAD
HAD:フリーの統計プログラム | Sunny side up! (norimune.net)
作成者 清水裕士氏 関西学院大学 社会学部 教授
専門 社会心理学
・数量化分析(コレスポンデンス分析)-クロス集計を分析
・因子分析
・クラスタ分析など

2)KH Coder
KH Coder: 計量テキスト分析・テキストマイニングのためのフリーソフトウェア
作成者 樋口耕一氏 立命館大学 産業社会学部 教授
専門 人間科学
・対応分析(コレスポンデンス分析)-自由意見を分析
・共起ネットワーク
・自己組織化マップなど


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です