図書館アンケートの分析は、要因間の相関関係を調べるところから始めましょう。
自由回答を除いたすべてのデータを、まずは予断なく分析にかけてみることが大事です。
Microsoft Excelの分析ツールは身近にあってこのリクエストに容易に応えてくれます。
アンケート
次のようなアンケートとその結果を見ていきます。
【アンケート結果の一部(データ変換済)】
相関分析
相関分析は、Excelのタブ「データ」から「データ分析」を開き、「相関」を選択して行います。
先頭行をラベルとして使用、新規ワークシート作成にしてデータ範囲を設定します。
結果は以下のようになります。
ここで、結果の全データを選択して「行/列の入れ替え」を行ったデータを新しいシートに作成します。
この2つのシートを重ね合わせたデータを新たなシートに作成します。こうしておくと何かと分析がしやすくなります。(結果のシートをA、行/列を入れ替えたシートをB、新たなシートをCとすると、Cの各セルにおいて「もし、Aのセルが空白ならBのセルのデータをCのセルに入れ、空白でなければAのセルのデータをCのセルに入れる」という処理を行って新たなシートCを作成します。)
相関係数
相関分析の結果の値は相関係数と呼ばれ、-1から1の間の値をとります。1に近いほど正の相関が強く、-1に近いほど負の相関が強いという意味になります。
絶対値でみた場合、一般に0.7以上のとき強い相関があると言われており、以下のような目安があります。
心理学分野などでは次のような例もあります。(※)
では、図書館アンケートの場合はどのような目安になるかというと、これまでの分析の経験からは、相関係数が0.20以上あればある程度相関があると考えてよく、0.10~0.20であれば弱いけれども何らかの相関があると見做して良いと判断できます。
目安の感覚としてはテレビの視聴率を考えると解りやすいかもしれません。
多くの番組の視聴率は数%程度がほとんどだと思われますが、その中で10%あれば成功の部類で、20%~30%もあればかなり注目度の高い人気番組だと言えるでしょう。
図書館アンケートの場合の相関の強さは、現実的にはそういった感覚に近い印象があります。もちろん、人気があるとは言え70~80%の人は他の多種多様な番組を視聴していることを常に意識しておく必要があります。
相関係数の色分け
以降では、相関係数を見て分析がしやすいように、「条件付き書式」を使って正の相関を赤色系統で、負の相関は青色系統で色分けしており、(絶対値で)0.2以上の場合と0.1~0.2の場合とで色の濃さを変えています。
分析結果と考察
分析結果を見て、特徴的な点や気が付いた点があれば記述しておきます。
これらの記述を踏まえて考察します。
考察では分析結果だけでなく、貸出数・貸出者数・貸出分野などの貸出情報、リクエスト情報、カウンターでの相談内容やご意見、地域の人口動態、社会動向などを裏付け情報として照らし合わせながら考察を深めていきます。
1)所蔵資料の満足度と回答者属性との間の相関をみます。
若年代層では資料に対する満足度が高く、高齢者ほど満足度が低くなっている様子がわかります。特に70歳以上で不満が顕著です。また、男性に不満が強いようです。なお、不満に正の相関がある場合は、「不満が強い」ということを表しています。
2)図書館利用者が、今後力を入れて欲しいと要望している分野をみてみます。
要望分野を分析することで、今後の選書方針に関して優先度を判断するための情報を得ることができます。
濃い赤色の箇所が特に要望が強く出ている箇所です。
70歳以上の小説、30歳代の家庭実用書、絵本・児童書、20歳代の中高生向け、地域資料、20歳未満の自然科学、50歳代の医療・健康、コンピュータなどが目立ちます。
分析結果の解釈・考察には、地域に子育て世代、高齢者がともに多い、近隣に大学があるなどのように地域環境の把握は必須です。
3)分野別に満足度の様子を見てみます。
経済・社会、絵本・児童書、地域資料については満足度が高く、小説、芸術、自然科学、医療・健康、視聴覚資料について不満が大きいようです。
4)分野間相互の相関をみることでわかること。
例えば、ビジネスの要望がある人は、語学、経済・社会にも関心が強いことがわかります。こういった関連情報も選書に活かすことができます。
(※)柴田康順(2018)『心理統計の使い方を学ぶ』P76 大正大学出版会