これからの図書館像では、地域を支える情報拠点として、地域の課題解決のためには本だけなく多様な資料の収集・提供が求められました。
職員のIT化と電子情報への対応は急務となり、また少子高齢化が進む中、持続可能な地域社会を目指して、図書館などの社会教育施設を地域の活性化、にぎわい創出に役立てたいという機運も生まれてきました。
司書資格
図書館で働く職員が司書資格取得のために大学で履修すべき「図書館に関する科目」も下記のように改訂され、平成24年4月1日に施行されました。
履修科目の新旧比較は下表のとおりです。 生涯学習概論、図書館制度・経営論、児童サービス論が1単位から2単位となり、新たにIT技術と社会を学ぶ図書館情報技術論が加わっています。いずれも『これからの図書館像』の提言を踏まえ強化された部分です。
資料と情報資源
中でもこの改訂の主旨を象徴しているのが科目名にある「資料」から「情報資源」への表記の変更です。電子情報をはじめ多様な文字媒体の資料を、情報資源という新たな定義にしたのです。
この図書館に関する科目が改訂されて10年が経ちました。図書館の現場はいまだ「資料」と呼称するのが主流です。
旧課程世代が培ってきた長年の影響力は強大で、10年程度では若い世代がこれまでの世代を乗り越えていくにはまだまだの力不足、影響力不足なのです。
多様な読書の概念が浸透するのにはまだもう少し時間がかかりそうですが、すでに新しい時代の図書館の到来に身を置いている司書さんは確実に増えてきています。
教育委員会から首長部局へ
令和元年6月7日に公布・施行された第9次地方分権一括法(※)によって、「公立社会教育施設の所管を地方公共団体の判断で条例により、教育委員会から首長部局への移管を可能とすることで、当該施設の観光・地域振興やまちづくり等における機動的・一体的な活用を促進」できるようになりました。
「公立社会教育施設を地方創生に役立てたい」「機動的で柔軟な地域づくりに貢献」「観光・地域振興を通じた地方創生」「首長部局のノウハウ等活用による社会教育の振興」など、博物館や図書館を利用して地域を盛り上げたいとしたものです。
先だって平成25年からの佐賀県武雄市図書館や平成28年開館の神奈川県大和市文化創造拠点シリウスなどは、出かけたくなる図書館として地域活性化の取り組みの先駆けとなるものでした。
その取り組みを成功例として、現在では首長管轄部署のもとで新しい図書館づくりに取り組む自治体が多く見られるようになってきました。
(※)文部科学省HPより 第9次地方分権一括法(地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(令和元年法律第二十六号))による社会教育関係法律の改正)
【概要】教育委員会が所管する公立の図書館、博物館、公民館その他の社会教育に関する教育機関(以下「公立社会教育機関」という。)について、まちづくり、観光など他の行政分野との一体的な取組の推進等のために地方公共団体がより効果的と判断する場合には、社会教育の適切な実施の確保に関する一定の担保措置を講じた上で、条例により地方公共団体の長が所管することを可能とする。
地域に役立つ図書館
地域を支え、地域に役立つ図書館について、『これからの図書館像-地域を支える情報拠点をめざして-(報告)』では次のように述べています。
「地域を支える図書館へ
このような図書館は、利用者に対し、読みたい本だけでなく、求めるテーマに関する雑誌・新聞記事やインターネット上の情報源を提供することができる。
この点が非常に重要である。
これによって、読書のための資料を求める人々だけでなく、医療、福祉,就職など生活上の課題をかかえた人々や、自治体行政,学校教育,地場産業、社会福祉などに携わる人々など、すべての成人や勤労者に必要な情報を提供できる。
このような図書館があれば、地域の人々は必要な情報を迅速かつ的確に入手することができ、学習や調査研究を迅速かつ効率的に行うことができる。
情報入手に必要な時間と費用も節約できる。必要な情報が提供されることによって、適切な状況判断や意思決定が行われ、地域社会の様々な課題の解決、ひいては地域の改革や振興に役立つ。
これからの図書館は、このようなサービスを行うことによって、豊かな地域社会の創造に貢献することができる。」
図書館アンケート
地域に必要な図書館とは何か、求められる情報とは何か。これら地域住民のニーズを把握する方法として図書館利用者アンケートがあります。
図書館では、的確なニーズの把握とそれに対する適切なサービスの提供が重要です。と同時に、その図書館が地域住民にとって役に立っているかどうか、豊かな地域社会づくりに貢献しているかどうかの評価測定も必要になってきます。
図書館の評価は、本の利用者だけでなく広く地域住民からの評価でなければなりません。アンケートの質問内容も蔵書を中心としたものだけでなく、暮らしやすさにつながっているかなど地域への貢献度を評価する質問が必要です。